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内製化はなぜ進まない?人材不足から考える開発体制の課題

目次

DXを推進するために内製化を進めようとする企業が増えています。しかし多くの場合、内製化の壁は技術や予算ではなく、それを担う人材の不足です。なぜ内製化は止まるのか、その構造を整理します。

内製化が人材不足で進まない理由

内製化を検討・推進しようとした企業が最初にぶつかるのは、「採用が思うように進まない」という壁です。しかしその背景には、採用難以上に根深い構造的な理由があります。

採用だけでは必要な人材を確保できない

内製化を進めるために必要な人材は、採用市場の中でも需要が集中している層と重なっています。クラウドエンジニア、アーキテクト、データエンジニアなど、内製化の核となるスキルを持つ人材は、多くの企業が同時に求めており、採用競争は激しい状態が続いています。

IPA「DX動向2024」によれば、DXに取り組めない理由の約7割が「人材不足」であるとされており※1、内製化に必要な人材は採用市場全体のボトルネックと重なっています。

内製化を支える経験者が不足している

内製化で難しいのは、エンジニアの数だけでなく、内製化そのものをリードできる経験者の不足です。内製開発の体制を立ち上げるには、アーキテクチャ設計、開発プロセスの整備、チームの育成まで一貫して担えるシニアエンジニアやテックリードの存在が欠かせません。

しかし、SIer依存が長く続いてきた企業では内製開発の経験を持つ人材が社内に育ってきておらず、外部から採用しようとしても、採用競争で不利になりがちです。

開発組織を短期間で立ち上げることは難しい

内製化は、エンジニアを数人採用すれば完了するものではありません。開発文化の醸成、コードレビューや品質管理の仕組みの整備、ドキュメントの標準化、チームとしての意思決定プロセスの確立など、「組織として機能する」状態を作り上げるには相応の時間がかかります。

人を採用することと、その人たちが組織として開発能力を発揮できるようになることは、別のことです。短期間での内製化実現を前提とした計画は、この組織構築にかかる時間を見落としがちです。

内製化を進める企業で起きやすい課題

内製化に着手した企業でも、人材不足を起点にしたさまざまな課題が連鎖的に発生します。

IPA「DX動向2024」の調査では、内製化を推進している企業のうち、「人材の確保や育成が難しい」と回答した企業が87.4%にのぼっています※2。この数字が示すように、内製化を始めた企業の多くが人材の壁に直面しています。

これらの課題は個別に発生しているように見えて、根は「人材供給が追いつかない」という一点に集約されます。

内製化は採用だけで実現できるものではない

内製化を採用活動の延長線上で考えている限り、この壁を乗り越えることは難しくなります。必要なのは、採用を頑張るという発想から、人材戦略として設計するという発想への転換です。

育成・外部人材活用を組み合わせる

内製化に必要な全てのスキルを採用で確保しようとすると、採用市場の競争に引きずられ続けることになります。コアとなる設計・意思決定の役割は採用や育成で確保しつつ、特定の技術領域や実装フェーズでは外部パートナーや海外人材を活用するという組み合わせが、現実的な選択肢になります。

内製化の目的は「全て自社で抱える」ことではなく、「技術的な意思決定力を自社に持つ」ことです。

段階的に内製化を進める

内製化を一度に完成させようとすると、人材が揃わないまま計画だけが先行してしまいます。まず技術的な意思決定ができる少数の中核人材を確保し、外部パートナーと協働しながら開発経験を積み、段階的に内製比率を高めていくというアプローチが、現実的な内製化の進め方です。最初から全てを内製にしようとせず、どの領域から始めるかを明確にすることが出発点になります。

技術ロードマップと人材戦略を連動させる

内製化がうまくいかない企業に共通するのは、技術ロードマップと人材計画が連動していないことです。

IPA「DX動向2025」によれば、DX推進に必要なスキルと現有人材の過不足を把握している日本企業は14.9%にとどまり、米独の約半数の水準と大きな差があります※3。どの時期にどのスキルが必要になるかを技術ロードマップから逆算し、採用・育成・外部活用の計画を立てることで、人材の確保と内製化のフェーズが噛み合うようになります。

技術責任者が考えるべき内製化戦略

内製化を技術戦略として設計するために、技術責任者が持つべき視点を整理します。

内製化の目的を明確にする

「SIer依存から脱却したい」「開発スピードを上げたい」「技術的な意思決定を自社に取り戻したい」という動機は正当ですが、それを「何を内製化するか」という具体的な目的に落とし込むことが先決です。目的が明確でないまま内製化を進めると、採用も育成も方向性が定まらず、コストだけがかかる状態に陥りやすくなります。

人材供給まで含めて開発体制を設計する

内製化の計画は、技術的なアーキテクチャの設計と同時に、それを担う人材をどう確保するかまで設計することが必要です。採用計画、育成ロードマップ、外部人材の活用方針を一体として設計することで、内製化のフェーズと人材確保のタイミングが連動します。人材のことを後から考える内製化計画は、実行段階で必ず壁にぶつかります。

内製と外部活用を最適に組み合わせる

内製化は、内製か外部委託かという二択ではありません。技術的な意思決定と核となるシステム開発は内製で担い、拡張が必要なフェーズや特定の専門領域は外部パートナーや海外人材で補完するという設計が、持続可能な内製化の体制です。採用だけに依存せず、人材供給の手段を複数持つことが、内製化を継続的に前進させるための条件になります。

内製化は採用活動の問題ではなく、開発体制と人材戦略を一体として設計できるかどうかの問題です。その設計の精度が、内製化が実現するかどうかを左右します。

まとめ

内製化が進まない根本的な理由は、採用だけでは必要な人材を確保できないという構造的な人材不足にあります。育成・外部活用・海外人材を組み合わせながら、技術ロードマップと連動した人材戦略を設計することが、内製化を実現するための現実的なアプローチです。